― 八王子JAZZ DAYの考えるジャズと、出演者選考の基本的なスタンス ―
八王子JAZZ DAYは、ジャンルを問わずさまざまな音楽を紹介するイベントではなく、「ジャズフェス」として開催しています。そのため出演者の選考においても、ジャズであること、そしてジャズとのつながりが伝わることを大切にしています。
「何をもってジャズとするのか」に、誰もが納得する唯一の答えがあるとは考えていません。
ジャズには、ニューオリンズ、スウィング、ビバップをはじめとするモダンジャズ、フュージョン、コンテンポラリーなど、長い歴史の中で生まれたさまざまなスタイルがあります。ボサノヴァやラテン、MORなど、ジャズと深く結びつきながら発展してきた音楽もあります。
八王子JAZZ DAYでも、いわゆるスタンダードやモダンジャズだけに出演を限定してきたわけではありません。これまでにも、ボサノヴァ、ラテン、MOR系をはじめ、多様なスタイルの演奏を紹介してきました。「スタンダードを演奏しているからジャズ」「ビバップだから本物」「コンテンポラリーだから対象外」といったように、ジャンル名だけで機械的に線を引くことはしていません。
一方で、どのような音楽でも「広い意味ではジャズと関係がある」とすれば、ジャズフェスとして掲げているものが見えにくくなってしまいます。演奏の中心が明らかに別のジャンルにあり、一般のお客様にジャズフェスの音楽として紹介するには、ジャズとの接点が伝わりにくいと判断した場合には、出演の対象とすることが難しいこともあります。
これは、他のジャンルや音楽表現の価値を否定するものではありません。八王子JAZZ DAYという場で、私たちがどのような音楽体験を届けたいのか。その方向性を大切にした結果です
八王子JAZZ DAYには、日頃からジャズを聴いている方だけでなく、普段はあまりジャズに触れる機会のない方も数多く来場します。
たとえば、街なかで100人が演奏を耳にしたとき、その多くの方が「あ、ジャズをやっている」と自然に感じられること。それが、私たちの考える一つのイメージです。
もちろん、これは人数を数えて判定する基準でも、「そう感じられない音楽はジャズではない」と定義するものでもありません。あくまで、八王子JAZZ DAYという場で一般のお客様にどのような音楽体験を届けたいかという、フェスとしての方向性を表したものです。
八王子JAZZ DAYで課題曲を設けているのも、この考え方に基づいています。
課題曲は、決められた形どおりに演奏してもらうためのものではありません。また、スタンダードを演奏できることによって、その音楽がジャズであると判定するためのものでもありません。
同じ曲でも、テンポやリズム、編成、アレンジ、即興演奏によって、まったく異なる音楽になる。共通の曲があるからこそ、それぞれの出演者の個性や解釈の違いが、普段ジャズを聴かない方にも伝わりやすくなります。よく知っている曲が思いがけない姿に変わる面白さや、同じ曲からいくつもの表現が生まれる自由さは、ジャズの大きな魅力の一つです。
課題曲は、出演者を同じ型に当てはめるためではなく、それぞれの違いをより鮮やかに届けるための、八王子JAZZ DAYならではの共通言語だと考えています。
私自身は、アシッドジャズやコンテンポラリーを含め、かなり広い範囲の音楽をジャズとして聴いています。しかし、一人の音楽ファンとしての好みやジャズ観と、多くの方が集まるジャズフェスのプログラムを構成する際の判断は、必ずしも同じではありません。八王子JAZZ DAYとして何を届けたいのか、その年の会場全体をどのように構成するのかという視点も必要だと考えています。
したがって、出演者の選考は、音楽そのものの優劣を決めるものでも、その音楽が「本物のジャズかどうか」を判定するものでもありません。素晴らしい演奏や高度な音楽であっても、当フェスの目指す方向性、会場との相性、その年のプログラム全体の構成やバランスなどを含め、総合的に判断した結果、出演をお願いできない場合があります。
選考結果は、その音楽の価値に対する評価ではなく、あくまで八王子JAZZ DAYという一つのフェスティバルにおける判断です。
八王子JAZZ DAYが目指しているのは、街を歩いていた人が、ふと演奏を耳にして、「あ、ジャズをやっている」「ジャズっていいな」「もう少し聴いてみたい」と足を止める。そんな景色です。
そこから、それぞれの人がもっとジャズを聞いてみたい!と思ったときに、古いジャズへ進んでも、新しいジャズへ進んでも、どちらも素敵なことだと思うのです。
私たちが作りたいのは、ジャズの境界線ではなく、ジャズへの入口です。
その入口を八王子の街に開くために、私たちはこれからも「ジャズフェス」であることにこだわりながら、多様なジャズの魅力を届けていきたいと思っています。
2026.8.17
八王子ジャズフェスティバル実行委員会
代表 北澤一也
